本日、2023年8月10日。
ウォーターアクティビティにとって一年で最も忙しい時期に差し掛かっております。
そんな時期にブログを書くだと…?
昨年、一昨年では考えられません。
昨年、一昨年は本当に毎日パンク寸前でギリギリ生き延びていました
わたくしが担当している予約管理。
毎日10件程度、土日になると20件程度飛んでくる予約申し込み。
それに加えキャンセル、時間変更、雨、遅刻、ノーショー、と毎日がパニック状態。
それがどうでしょう。
今年は心安らかな日々が続いております。
疲れこそありますが、全然元気です!
その要因はなんだ?
実はそれ自体は副産物。
今回は、2023年に改善した大きな大きなチャレンジ「スーパー繫忙期のOTAでの販売中止」の途中経過とその効果をご紹介します!
めちゃくちゃ結果出て、作業負担も楽になってる!
もくじ
今回の内容
- OTAとの付き合い方を真剣に考える
- 広告費はいかほどに?
- ゴールデンウィークに小さな検証
- 繁忙期がやってくる!
OTAとの付き合い方を真剣に考える
昨年、東京に遊びに行った際、元そとあそびの木村さんとお食事に行き、お話している中で「オンライントラベルエージェント(以下OTA)は後払い広告」だ、という話を教えてくれました。
目玉が飛び出るほどのアハ体験!すごい!
一般的な広告をイメージすると、例えば新聞に広告を出す場合、先に新聞社に広告費を支払い記事として掲載、その後記事を読んで予約が成約したとしても新聞社に手数料は支払わない「前払い広告」です。
OTAは、多くが登録料や月額料は発生せず、その代わりOTAで成約した予約の金額に対し、各OTAが設定しているパーセンテージの手数料を支払う、という仕組みです。
OTAがそれぞれでアクティビティを体験したいお客様をWeb上で集客し、そこでかのあのツアープランを知り、予約してくれる。
この集客をお願いしている、という部分に手数料が発生、つまり「出来高払い」の「後払い広告」ということになります。
木村さんに教えてもらうまでOTAに対して広告を出している意識は全くありませんでした…
「わたくしたちは広告を出している」、この意識を持ったことで一つ大きな考えが思い浮かびました。
大忙しのバンバン予約が入るスーパー繁忙期に広告を出稿しているだと…
これは一度立ち止まって考えるべきだと分析してみました!
広告費はいかほどに?
例えば一番申し込みが多い大人2名(15,400円/大人2名)で参加される場合に、公式HPに入った予約と各OTAに入った予約の手数料をで比較してみると
(15,400円/大人2名) | 手数料率 | 手数料 | 公式HPとの差額 |
公式HP(予約管理サイトのウラカタ) | 5% | 770円 | ー |
じゃらん | 15% | 2,310円 | 1,540円 |
アソビュー | 15% | 2,310円 | 1,540円 |
アクティビティジャパン | 13% | 2,002円 | 1,232円 |
たびらい | 15% | 2,310円 | 1,540円 |
そとあそび | 15.3% | 2,356円 | 1,586円 |
公式HPに比べOTAは1件あたり1200~1500円の広告費を出していることになりますね
続いて1日に区切って公式HPのみで、すべてのネイチャークルージングツアーが定員に達した場合の手数料を見てみると
定員 | 合計売上 | 手数料(5%) | |
10:00 | 16名 | 123,200円 | 6,160円 |
13:00 | 16名 | 123,200円 | 6,160円 |
15:30 | 16名 | 123,200円 | 6,160円 |
合計手数料 | 48名 | 369,600円 | 18,480円 |
うむ、スムーズに受付をする、事前決済で作業を減らす、と考えるとウラカタに5%の手数料を支払っているのは全くもって必要な設備投資だと感じています。
さらに手数料が15%のOTAからの予約で、すべてのネイチャークルージングが定員に達した場合を見てみると
定員 | 合計売上 | 手数料(15%) | |
10:00 | 16名 | 123,200円 | 18,480円 |
13:00 | 16名 | 123,200円 | 18,480円 |
15:30 | 16名 | 123,200円 | 18,480円 |
合計手数料 | 48名 | 369,600円 | 55,440円 |
比較するとシンプル3倍の手数料が発生し、一日同じツアーをしたとしても手残りが36,960円も減ってしまいます。
衝撃的な差!
これがシーズンを通したトータルで考えると…まったくもって無視できる金額ではありません。
そこでかのあ史上最高の売り上げをたたき出した昨年2022年のウラカタを含めたOTAに支払った手数料を確認してみたところ…その額なんと「約334万円」!
こいつは節約大臣スズキは心中穏やかではいられません。
でかい、デカすぎる!
ということで「広告が必要ない時期」を突き止め、この「約334万円」という巨額の経費を削減するべく作戦を考えました!
ゴールデンウィークに小さな検証
ここで「2023年の夏季ツアー販売のすべての日程でOTAの販売を止める」という、とち狂った答えにはもちろんなりません。
当たり前のことですが、ニーズが高い時期は広告が必要ない、ニーズが低い時期は広告が必要。
手数料は下がったとしても売上全体が下がっちゃ意味がないw
となるとニーズが高い時期を突き止め、そこは広告を打たない、という期間を見つけ出す必要があります。
しかし、その前に「本当にOTAの販売をしないで予約が埋まるのか?」という部分を検証しないといけません。
そこでまずはゴールデンウィークという春先にやってくるミニ繁忙期に検証してみました!
博打を打つのではなく石橋をたたいて渡っていく堅実なスズキスタイル
まず検証内容として
2週間前より早い段階で予約枠が埋まり始めて残枠5以下になった場合、OTAの予約枠のみ〆、公式HPからの予約に限定しても定員に達するかどうかを検証
- 予約残枠が5以下になったらOTAを〆る
- 〆た残枠が埋まるかどうかを確認
- 残1は入る可能性を上げるためOTA販売再開
というソロリソロリと慎重な方法で検証を行いました。
この条件を決めるときに後押ししてくれたデータとして
①寒い冬に孤独と戦いながらコツコツ集計した過去の情報をデータに変換したところ
- 当日~1週間前が一番予約が入りやすい(全体の43%)
- 1週間前~2週間前がその次に入りやすい(全体の13.5%)
- 全体の56.5%の予約は2週間以内に入る
直前になったらガンガン予約が入る、といったデータはすでに手に入れて確信あり
②2023年と2022年の4/12時点で公式HPからの予約数を比較
公式HPからの予約 | |
2022年(1/1~4/12) | 89件 |
2023年(1/1~4/12) | 239件 |
恐ろしいハイペースで公式HPからの予約が入っていることを確認。
やはり日頃からどこを確認しておくべきかアンカーを見つけて数字をモニタリングしていた甲斐がありました
この2つの情報から
という仮説に行きつき、条件を設定しました。
そしてドキドキのゴールデンウィーク検証結果は…
OTA〆日 | 時間枠 | 残枠 | 成否 | ||||
4/13 | 5/4(13:00) | 4 | 4/16 大4 残0 | ◎ | |||
5/6(10:00) | 2 | 4/23 ©残5 | 4/29 ©残8 | 全開放 雨 | ✖ | ||
5/6(15:00) | 2 | 4/23 大2 残0 | ◎ | ||||
4/15 | 5/5(13:00) | 5 | 4/15 大2 残3 | 4/20 大3 残0 | 4/22 大2 残2 | 4/24 大2 残0 | ◎ |
4/16 | 5/5(10:00) | 2 | 4/26 大2 残0 | ◎ | |||
4/21 | 5/6(13:00) | 5 | 4/29 ©残6 | 全開放 雨 | ✖ | ||
4/23 | 5/3(13:00) | 3 | 4/23 大2 残1 | 4/24 全開放 | 4/29 ©残3 | 4/30 大2 全開放 | ◎ |
5/5(15:00) | 5 | 4/29 © 残7 | 4/29 大2 残5 | 4/29 大1 残4 | 4/29 大3小1 残0 | ◎ | |
4/24 | 5/3(10:00) | 3 | 4/27 大小3 残0 | ◎ | |||
4/27 | 5/4(10:00) | 4 | 4/27 大2 残0 | ◎ | |||
4/28 | 5/1(13:00) | 3 | 4/29 大2 残1 | 4/29 全開放 | 4/30© 残3 | 4/30 大2小1 残0 | ◎ |
検証としては大成功!
結構ドキドキして予約状況を眺めてましたが一安心!
天候不良でのニーズの低下は致し方ないもので5/6だけは売り切ることができませんでしたが、これは問題なし。
それ以外の検証した日程はすべて公式HPからの予約で埋まりました!
これだけで残枠合計31名×7700円の手数料を計算してみると
35,805円-11,935円=最大23,870円の削減となります!
金額としては小さいとはいえ、約1週間でこの削減!
さて、このゴールデンウィークのこの小さな検証結果を携えて、本丸の夏のスパー繁忙期をどうするか決めていきます!
スーパー繁忙期がやってくる!
昨年2022年の予約結果とにらめっこし、どの時期からツアーの定員に達する確率が高いか、を確認しながらゴールデンウィークの検証結果である程度の手ごたえを得た状態で、本丸のスーパー繁忙期をどうするかをゴールデンウィークが空けた5/13に決定しました!
2023年は7/22~8/20の30日はスーパー繁忙期と設定
OTAの予約販売をすべて〆、公式HPからの予約に限定
- 予約が入る確率が最も高い1週間前になっても空いていた場合に、そこからOTAの販売を再開
- 残1は入る可能性を上げるためOTA販売再開
ここからさらに経過を観察していたところ、6/30に8/21~8/27も予約がドシドシ入ってきていることを確認。
噂で本州はこの週もまだ夏休みだということなので、追加でこの1週間もスーパー繫忙期と認定して微修正
7/22~8/27の37日はスーパー繁忙期と設定
OTAの予約販売をすべて〆、公式HPからの予約に限定
- 予約が入る確率が最も高い1週間前になっても空いていた場合に、そこからOTAの販売を再開
- 残1は入る可能性を上げるためOTA販売再開
という方針で繁忙期を迎え入れる体制をとりました!
仮に37日間のすべての予約枠が公式HPからの予約になったとして
定員 | 合計売上 | 37日 | 手数料(5%) | |
10:00 | 16名 | 123,200円 | 4,558,400円 | 227,920円 |
13:00 | 16名 | 123,200円 | 4,558,400円 | 227,920円 |
15:30 | 16名 | 123,200円 | 4,558,400円 | 227,920円 |
合計手数料 | 48名 | 369,600円 | 13,675,200円 | 683,760円 |
仮に37日間のすべての予約枠がOTAからの予約になったとして
定員 | 合計売上 | 37日 | 手数料(15%) | |
10:00 | 16名 | 123,200円 | 4,558,400円 | 683,760円 |
13:00 | 16名 | 123,200円 | 4,558,400円 | 683,760円 |
15:30 | 16名 | 123,200円 | 4,558,400円 | 683,760円 |
合計手数料 | 48名 | 369,600円 | 13,675,200円 | 2,051,280円 |
あり得ませんがすべてOTAで予約が完了した世界線とすべてが公式HPで予約が完了した世界線を比較したところ
2,051,280円-683,760円=1,367,520円
の手数料削減になります。
これは机上の空論の数字で、もともと公式HPからの予約が一番大きいですので130万という数字になるはずがありませんが、50%でも683,760円の削減、30%でも410,256円の削減となります。
仮に30%の40万でも削減効果としてはとてつもなく大きい!
まだ途中経過ですので最終の結果は出ておりませんが、8/7時点で公式HPとOTAの予約割合を2022年と比較したところ
2022(最終) | 公式HP | その他 | じゃらん | AJ | アソビュー | そとあそび | たびらい | 宝島 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
割合 | 41.6% | 24.2% | 19.7% | 3.5% | 3.8% | 2.8% | 2.8% | 1.6% |
2023(8/7時点) | 公式HP | その他 | じゃらん | AJ | アソビュー | そとあそび | たびらい |
---|---|---|---|---|---|---|---|
割合 | 64.8% | 9.5% | 13.9% | 2.8% | 3.9% | 3.7% | 0.1% |
と、公式HPからの予約が23%程度爆伸びし、公式HP+その他で65.8%から約74.3%と8.5ポイント伸ばすことが出来ております。
スーパーいい感じ!
一点、OTAのそとあそびが公式HPの予約管理システムの「ウラカタ」と連携していることで、スーパー繁忙期にそとあそびの販売を中止することが出来ませんでした。
致し方なし
もちろん予約割合で言えば、今が一番OTAの割合が低く、スーパー繫忙期を超えてからはOTAを通常通り販売するので公式HPの割合が減るでしょうが手数料は確実に削減できる結果となるはずです。
最終の手数料削減がいくらになるのか。今から結果が楽しみです!
今回の結果
最初は大きな不安がありました。
まったくもって予約枠が埋まらず、売上が大きく下がる、そんなことも想像していました。
結果、博打に勝ちました!
まだ最終結果を計算できていませんが、手数料が大幅に削減できるのは明らかです。
なんせ現在毎日売り上げをエアレジに入力するときにほぼウラカタからの会計しかないので間違いないです!
手数料削減に加え、副産物がありました。
- 予約管理作業の負担が減少
- 予約管理作業のミスが減少
OTAの予約が入った場合、予約管理作業として
という作業が必要なのですが、公式HPからの予約の場合は
で終わる超シンプル構造です。
スーパー繫忙期なのにOTAからの予約が入らないことで作業量、作業時間が大幅に減少しました。
予約がいくら入って来ようがプレッシャーが全然違う!
さらに、Actimをいじる必要性がないので勘違いでの残枠数のミスが無くなり、昨年何度かあったガイドは一日2回転というルールを超えて3回転目をお願いする、という定員を超える予約を受ける、ということが一切なくなりました!
先日「そういえば今年ミスしてない!」と気が付きました。
昨年まで、週末にバタバタ予約が入った次の月曜日には、予約管理でミスがないか不安で何度も何度も確認していた日々は今ではもう必要ありません!
人はミスをする。
システムはミスをしない。
システムが確実にミスなく管理してくれています。
手数料を削減でき、作業負担、作業時間を大幅に削減できた。
これはバックオフィス業務として、大きな大きな前進となりました!
今回の学び
どこかで0→1の事業スタートのステージから1→10の事業規模が大きくなるステージで、管理しきれず「お客様に殺されるというタイミングがある」と聞いたことがあります。
この予約管理は昨年まで「お客様に殺される」、つまり、ミスが頻発、作業負担と精神的負担が大きすぎて受け止めきずに崩壊する、というステージだったのかもしれません。
今回の改善でそれを乗り越えれたのを確信しています。
また、経営の観点からOTAに依存しすぎるというのはリスクが高すぎるという懸念がありました。
ある日突然OTAが「手数料20%にしま~す」と言われたときにOTAに軸足の体重が乗りすぎていた場合、身動きが取れずにただただ受け入れるしか道がありません。
そんな未来も十分あり得ます。
そういったときが来ても大丈夫なようにOTAに依存しすぎないで、主導権を自分たちで掴み、常にハンドリングできる状態を作り上げておくことで強い経営を行えます。
最終的に「今年はOTAの○○は10%、○○は5%、○○は1%にするか」みたいに調整できる余裕があれば恐いものなしです。
もし「手数料20%にしま~す」とOTAに言われたときに、「じゃあ、掲載をやめま~す」と笑顔で言えるのが理想的ですね
はたしてOTAは味方か敵か?
このあたりは常に考えていました。
汗水たらしてお客様を笑顔にしているガイドを目の前にしている私は、それだけ頑張っているガイドが見返りを得られる状態を作るのがお仕事です。
もちろんOTAは味方ではありますが、優先するべきはガイド、そのために手残りを増やしてガイドに見返りを渡せるのを優先し、OTAとは適切な関係を構築する必要があります。
スーパー繫忙期に広告は必要ない。
当たり前のことを当たり前に取り組んだのが今回の結果です。
しかし、まだ検証できていませんが、OTAでの販売数を減らすことで、OTA内の表示順掲載順位が下がる、ということが起こることが予測されます。
そりゃそうですよね。
OTAにとってはたくさんの販売枠があり、OTA経由で予約をたくさんしてくれる事業所を優先するのが経済合理性として当たり前です。
さて、その点はどれほどの問題になるのか、そして問題になったときにどう巻き返そうか…まだまだやるべきこと、やれることがありそうです。
これは結構なチャレンジでした。
今まで積み重ねてきた信頼+HPをリニューアル、といったいくつもの要因の先に今回の改善があります。
むやみにやったらに勝負を仕掛けるのは危ないのかもしれません。